アンヌ・フリポ、アルベルト・モリヤス、ファブリス・ペルグラン……現代の香水界を動かすスター調香師10人と一生モノの代表作
香水は、ブランドではなく「調香師」の名前で選ぶこともできます。好きな香りの作り手がわかれば、次の一本も見つけやすくなるからです。ただ、調香師の多くは香料会社の社員で、表に名前が出にくい人たちです。この記事では、大手香料会社の看板調香師から独立したアトリエの職人まで、いまの香水界を動かす10人を選び、所属と作風、当サイトで確かめられる代表作を一人ずつ紹介します。
2026.10.27 · 9分で読めます

調香師で香水を選ぶということ
世界の香水の多くは、IFF、dsm-firmenich(フィルメニッヒと DSM が合併してできた会社)、ジボダンといった香料会社の調香師がつくっています。ブランドが依頼を出し、香料会社の調香師が香りを組み立てる仕組みです。だから同じ調香師の作品が、まったく違うブランドから出ていることがよくあります。仕組みは調香師はお金持ち?花畑はどこにある?で、メゾンが自分で抱える専属調香師はエルメス・シャネル・ディオール・カルティエの専属調香師たちで紹介しています。
ここで選んだ10人は、次の3つに分かれます。所属は、各社の公式の調香師紹介や Wikipedia で確かめられたものだけを書きます。
- 大手香料会社のスター:アンヌ・フリポ、ドミニク・ロピオン、セリーヌ・バレル(IFF)、アルベルト・モリヤス、ファブリス・ペルグラン、コラリー・スピシェ(dsm-firmenich)、カンタン・ビッシュ(ジボダン)
- 独立したラボを持つ人:ナタリー・フェストエール(LABScent)
- ニッチ系の職人:ルカ・マッフェイ(アトリエ・フレグランツェ・ミラノ)、ベルトラン・デュショフール(独立)
それぞれの代表作は、当サイトで調香師としてクレジットされている香りから選びました。共作の香りは、共作者の名前も添えます。
世界的ヒットを生む4人
1. アンヌ・フリポ(IFF)
代表作は、オリヴィエ・ポルジュ、ドミニク・ロピオンと共作したランコムのラ ヴィ エ ベル(2012年)と、カルロス・ベナイムと共作したイヴ・サンローランのリブレ(2019年)。リブレはラベンダーとオレンジブロッサムを重ねた香りです。ニッチ側では、ラルチザン パフュームのラ シャス オ パピヨン エクストレームがあります。
2. アルベルト・モリヤス(dsm-firmenich)
アルベルト・モリヤスは1950年、スペインのセビリア生まれです。1970年にフィルメニッヒに入り、ほぼ独学で調香を身につけました。1975年のマスト ドゥ カルティエで名を上げ、1997年には妻と自分のブランド「ミザンシール」を始めています。
1994年のカルバン・クラインCK ワン(ハリー・フレモンと共作)と、1996年のジョルジオ アルマーニアクア ディ ジオ プールオムは、1990年代の「清潔で透明な香り」を象徴する二本です。マーク ジェイコブスのデイジーも彼の作品で、ストロベリーとバイオレットを使った明るいフローラルです。
3. ドミニク・ロピオン(IFF)
ドミニク・ロピオンは1955年、パリ生まれです。グラースのルールの調香学校で学び、1984年のジバンシイ「イザティス」で早くに成功しました。2000年に IFF へ移り、2018年にマスター・パフューマーの称号を受けています。一つのテーマや素材のまわりに、厚みや質感、対比を組み上げていくのが彼のやり方です。
4. カンタン・ビッシュ(ジボダン)
カンタン・ビッシュは、ジボダンのマスター・パフューマーです。大学で舞台演出を学び、グラースでのわずか1か月の研修で調香の道を選びました。「何を舞台に載せ、どう照らし、音楽や声、衣装をどう添えるか」と、香りづくりを芝居の演出にたとえます。
素材と土地に根ざす3人
5. ファブリス・ペルグラン(dsm-firmenich)
ファブリス・ペルグランは1969年、グラース生まれです。父は調香師、祖母はジャスミン摘み、祖父は天然香料を扱っていました。ロベルテで原料の加工や品質管理を経験し、1995年にマンで調香師になります。2008年にフィルメニッヒ(現 dsm-firmenich)へ移り、パリでの調香とグラースでの天然香料の開発を両方担っています。
6. セリーヌ・バレル(IFF)
セリーヌ・バレルは、1980年代のグラースで育った IFF の調香師です。はじめはブランド側の仕事を目指してビジネススクールに進み、インターンで調香の舞台裏に触れて調香師を志しました。IFF の調香学校で学び、ニューヨークで15年ほど働いたのち、フランスに戻っています。
7. コラリー・スピシェ(dsm-firmenich)
コラリー・スピシェは、スイス・ジュネーブ出身の dsm-firmenich の調香師です。ジュネーブ大学で生化学を学び、パリで修士課程を終えたあと、2018年に同社のファインフレグランス調香学校に入りました。旅先で人が料理し、装い、話す様子から着想を得ると話しています。
当サイトで嗅げるのは、グタールのヴァニーユ デ ロッシュです。クリーミーでほのかにウッディなバニラに、アーモンドとプラム、ジャスミンを重ねた香りで、公式は「影と光のあいだにある女性のため」と説明しています。
独立系とニッチを動かす3人
8. ナタリー・フェストエール(LABScent)
ナタリー・フェストエールは、16歳でイヴ・サンローランの「オピウム」を嗅いで調香師を志しました。1983年にルール社(現ジボダン)の調香学校に入り、ジボダン(1983〜2008年)とシムライズ(2008〜2014年)で働いたあと、2014年に独立します。いまはパリ・モンマルトルの古い画廊に構えたラボ「LABScent」で、主にニッチや独立系のブランドの香りをつくっています。
9. ルカ・マッフェイ(アトリエ・フレグランツェ・ミラノ)
ルカ・マッフェイは1985年、香料に携わる家に生まれたイタリアの調香師です。2007年に家業の会社でこの世界に入り、2015年にはアッカ カッパの香りでアート・アンド・オルファクション・アワード(独立系の香水に贈られる国際的な賞)のインディペンデント部門を受けました。いまはミラノのアトリエ・フレグランツェ・ミラノでマスター・パフューマーを務めています。
10. ベルトラン・デュショフール(独立)
ベルトラン・デュショフールは、1985年にグラースでキャリアを始め、いくつかの香料会社を経て2008年に独立しました。ラルチザン パフュームでは、ティンブクトゥ(2004年)、ゾンカ(2006年)などを手がけ、のちに専属調香師も務めました。お香の香りの名手として知られる人です。近年は自分のブランド「レントロピスト」も手がけています。
ラルチザン パフュームのノワール エクスキ(2015年)は、マロンとコーヒー、メープルシロップを合わせたグルマンです。ヴィルヘルム パフューマリーのトゥ マイ ファーザーは、ピートの効いたウイスキーのアコード(いくつかの香料を組み合わせてつくる「〜らしい」匂いという意味)を軸にした、スモーキーなウッディ。メゾン クリヴェリのシトラス バティカンガもあります。調香師が立ち上げたブランドは、調香師が立ち上げたアルチザンブランドでまとめています。
最初の一本の選び方
まとめ
- 香水の多くは IFF、dsm-firmenich、ジボダンなど香料会社の調香師がつくり、同じ人の作品が別々のブランドから出る
- フリポ(IFF)はオレンジブロッサム、ロピオン(IFF)は花の名手、モリヤス(dsm-firmenich)は透明感のある大ヒット
- ビッシュ(ジボダン)は舞台演出のように香りを組み立てる。ガイダンスはアムアージュ最大のヒット
- ペルグランとバレルはグラース育ち、スピシェはジュネーブ出身で2018年に調香学校へ
- フェストエール、マッフェイ、デュショフールは独立系やニッチを動かす職人
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この記事に出てくるノート
出典(18)
- IFF(プレスリリース / AAP)「IFF Master Perfumer Anne Flipo Receives Fragrance Foundation Lifetime Achievement Award(2023年6月)」
- Essential Parfums 公式「Anne Flipo(調香師紹介)」
- Wikipedia(英語版)「Alberto Morillas」
- dsm-firmenich 公式「Alberto Morillas(調香師紹介)」
- Wikipedia(英語版)「Dominique Ropion」
- IFF(プレスリリース)「IFF Honors Dominique Ropion With Prestigious Master Perfumer Title(2018年)」
- Wikipedia(英語版)「Quentin Bisch」
- Essential Parfums 公式「Quentin Bisch(調香師紹介)」
- dsm-firmenich 公式「Fabrice Pellegrin(調香師紹介)」
- Zoologist Perfumes 公式「An Interview with Céline Barel, the perfumer of Zoologist Squid」
- Maison d'Etto「Perfumer Spotlight: Céline Barel」
- dsm-firmenich 公式「Coralie Spicher(調香師紹介)」
- The Fragrance Foundation France「Rencontre avec Nathalie Feisthauer(2020年11月)」
- LABScent「LABScent(公式サイト)」
- MAM - Maestro d'Arte e Mestiere「Luca Maffei(2020年 受章者紹介)」
- Atelier Fragranze Milano「About(会社紹介)」
- Wikipedia(英語版)「Bertrand Duchaufour」
- Les Bains Guerbois 公式「Bertrand Duchaufour(調香師紹介)」
































