ディプティックの歴史と美学:サンジェルマン大通り34番地の3人と、代表香水8本の読み解き
ディプティックは、ニッチ香水に興味を持った人が最初に出会うことの多いブランドのひとつです。ただ、その始まりは香水店ではなく、布や雑貨を扱う小さな店でした。この記事では、公式の沿革をもとにブランドの成り立ちと美学をたどり、代表的な香水8本を、公式のノートと物語から読み解きます。
2026.10.24 · 7分で読めます

3人の友人と、サンジェルマン大通り34番地
公式の沿革によると、ディプティックを作ったのは3人です。パリの国立美術学校(ボザール)を出た画家のデズモンド・ノックス=リート、国立装飾美術学校を出たインテリア建築家のクリスティアンヌ・モンタドル=ゴートロ、そして銀行家の息子でインドシナ(今のベトナム)で育った旅好きのイヴ・クエスランです。
デズモンドとクリスティアンヌは1949年に出会い、家具用の布地のデザインで協働を始めました。そして1961年、3人はパリ5区のサンジェルマン大通り34番地で店を開きます。扱ったのは骨董品や、手を加えた異国の品々と日用品。公式は彼らを「ささやかなものの商人」と表現しています。
ディプティックの歩み(公式の沿革と英語版Wikipediaから)
1949年
デズモンドとクリスティアンヌが出会い、家具用の布地のデザインで協働を始める
1961年
3人がパリのサンジェルマン大通り34番地に店を開く
1963年
香りつきのキャンドルに乗り出す。最初の香りはサンザシ、シナモン、紅茶(テ)
1968年
最初のオードトワレ「ロー」
1993年
デズモンドが亡くなり、イヴ・クエスランがラベルのデザインを引き継ぐ
2005年
投資会社マンザニータ・キャピタルがディプティックを取得
1963年のキャンドルは、公式が「香りつきキャンドルという新しい領域を切り開いた」と書く、ブランドの大きな転換点です。5年後の1968年に最初のオードトワレ「ロー」が生まれ、布と雑貨の店は、香りのメゾンへと姿を変えていきました。
ラベルや瓶に描かれた楕円と、躍るように配置された文字は、公式がブランドの象徴として挙げる視覚的な特徴です。英語版Wikipediaによると、キャンドルの白黒のラベルは画家のデズモンドがデザインしたもの。画家の手による文字のレイアウトが、今もブランドの顔になっているわけです。なお、英語版Wikipediaはイヴ・クエスランの経歴を舞台美術家としており、公式の「インドシナで育った旅人」という紹介とは切り口が異なります。
ディプティックの美学:旅と記憶を香りにする
代表作の公式説明を読み比べると、多くの香りに具体的な場所や記憶が書き込まれていることに気づきます。ベトナムの森や海辺、ギリシャのイチジクの林、創業者たちが通ったパリのバー。ディプティックの香りは、抽象的な「イメージ」より、誰かが実際に見た風景から出発しているものが多いのです(ここは編集部の読み方です)。
もうひとつの特徴は、ひとつの素材を主役にして、その素材を多面的に描く作り方です。フィロシコスはイチジクの葉、実、木を、フルール ドゥ ポーはムスクを、それぞれ中心に置いています。「何の香りか」が名前と説明から分かりやすいことは、初めてニッチ香水に触れる人にとって入りやすさにつながっていると考えます。
代表香水8本を読み解く
1. 「ロー」:16世紀のポプリから生まれた最初のオードトワレ
1968年に出たディプティック最初のオードトワレです。公式は、シナモン、ローズ、クローブ、ゼラニウム、サンダルウッドを含む16世紀のレシピに着想を得たと説明しています。商品ページでは「クローブ、シナモン、花と木のマセレーション(香料を浸して香りを移すこと)」とされています。スパイスの温かさが前に出るので、さわやかな香水を期待すると印象が違うかもしれません。ブランドの原点を知りたい人に。
2. 「ロンブル ダン ロー」:川辺の柳の下でみる白昼夢
3. 「フィロシコス」:イチジクの木をまるごと
名前はギリシャ語で「イチジクの木の友」という意味。公式は、ギリシャのペリオン山で、日に焼けた野生のイチジクの林を抜けて海へ向かった夏の記憶を物語にしています。ノートはイチジクの葉、イチジクの樹液、イチジクの木、ブラックペッパー。英語版Wikipediaでは1996年、調香はオリヴィア・ジャコベッティとされています。葉の青さ、実のミルクのような丸み、白い木の密度を順に感じる香りで、グリーンの香りが好きな人の定番候補です。イチジクの香り全般はグリーン&フィグ系ニッチ香水5選で比べています。
4. 「タム ダオ」:ベトナムの聖なる森
イヴ・クエスランの子ども時代の記憶をもとにした、白檀の香りです(英語版Wikipediaでは2003年)。オードトワレはサンダルウッド、シダー、サイプレス、マートル、オードパルファンはサンダルウッド、シダー、サイプレス、コリアンダーと、濃度でノートが少し違います。くわしくはウッド系ニッチ香水7選で紹介しています。
5. 「ド ソン」:海風にのるチュベローズ
7. 「フルール ドゥ ポー」:エロスとプシュケのムスク
8. 「オルフェオン」:創業者たちが通ったバー
選び方と、オードトワレ/オードパルファンの違い
ディプティックの香水は、同じ名前でオードトワレとオードパルファンの両方が出ているものが多くあります。濃度が違うだけでなく、タム ダオのようにノートの一部が違う場合もあるので、店頭やサンプルで試すときは、どちらの濃度かを必ず確認してください。一般にオードパルファンのほうが香料の割合が高く、香りの残り方も長めになります。
好み別の試す順番(編集部の提案)
- 緑や木が好き:フィロシコス → タム ダオ
- 花の香りが好き:ロンブル ダン ロー → ド ソン
- 肌の香りがほしい:フルール ドゥ ポー
- 甘さと夜の気配:オー デュエル → オルフェオン
ディプティックの次に試したいブランドは最初のニッチ香水で失敗しない名作10選で、同じく人気の高いニューヨークのブランドについてはル ラボの歴史とブランド哲学で紹介しています。
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出典(12)
- Diptyque「The Story of Diptyque」
- Wikipedia(英語版)「Diptyque」
- Diptyque「L'Eau Eau de Toilette」
- Diptyque「L'Ombre dans l'Eau Eau de Toilette」
- Diptyque「Philosykos Eau de Toilette」
- Diptyque「Tam Dao Eau de Toilette」
- Diptyque「Tam Dao Eau de Parfum」
- Diptyque「Do Son Eau de Toilette」
- Diptyque「Eau Duelle Eau de Toilette」
- Diptyque「Fleur de Peau Eau de Parfum」
- Diptyque「Orphéon Eau de Parfum」
- Harper's Bazaar Malaysia「Diptyque Orphéon Eau de Toilette」
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