アルデヒドの香水
Aldehydes
この原料を使っている香水
アルデヒドについて
どんな香り
香水でアルデヒドと呼ばれるのは、おもに炭素が10から12個つながった脂肪族アルデヒドです。炭素の数や形によって香りは大きく変わり、鎖が短いものはとがった強いにおいですが、長くなるにつれて穏やかになります。
炭素8から12あたりでは、ろうのような質感をともなう花の香りになります。炭素10のデカナールは脂っぽさにオレンジの気配、炭素11のウンデカナールは青さと花とオレンジ、炭素12のドデカナールは脂っぽさのある花とオレンジ、と表現されています。
原料の話
ウンデカナールやドデカナールは、柑橘の精油にも少し含まれています。ただし香料として使われるものは、ふつう化学的につくられます。
よく使われるもう一つのアルデヒドに、2-メチルウンデカナールがあります。業界ではアルデヒド C-12 MNA とも呼ばれ、天然ではキンカンの果皮の油に見つかっています。ハーブやオレンジ、アンバーグリスを思わせる香りで、炭素の鎖にメチル基が一つ付くことで、香りが強く心地よくなり、脂っぽさが和らぐとされています。
誰が見つけた・作った
2-メチルウンデカナールを最初に合成したのは、化学者ジョルジュ・ダルザンで、1904年のことです。このとき使われた反応は、彼の名前からダルザン反応と呼ばれ、今もこの香料の製造に使われています。
香水での使われ方
アルデヒドの名を広めたのは、シャネルの N°5 です。調香したのはロシア生まれの調香師エルネスト・ボーで、1921年5月、パリのカンボン通りの店で一部の顧客に向けて発表されました。ボーはアルデヒドを、香り全体を持ち上げる役として使いました。
N°5 のトップには、イランイランやネロリとともに、炭素10から12のアルデヒドが置かれています。ボーはそれ以前、モスクワの香料会社ラレーで1914年に Rallet No. 1 をつくり、ウンデカナールやドデカナールを使っていました。N°5 はそこに 2-メチルウンデカナールなどを加えた構成と分析されています。
豆知識
香水で 2-メチルウンデカナールを初めて使ったのは、ボーではありません。1912年、調香師ロベール・ビエネメがウビガンの Quelques Fleurs に使い、ボーはそれにならったとされます。
N°5 には、研究助手が原液を10%に薄めた液と取り違え、それまでにない量のアルデヒドが入った、という逸話も伝わっています。2-メチルウンデカナールは今も石けんや洗剤の香りづけに使われ、針葉樹やモミのような印象を添えています。